分担研究者:東北大学 加藤幸成(代表:長崎大学 池田裕明)
令和6年度〜令和8年度
課題名:がん特異的CasMab抗体を用いた難治性固形がんに対するCAR-T細胞療法に関する研究開発
本研究では、造血性腫瘍に比べ開発が遅れる固形がんに有効なCAR-T療法の開発を目的とする。CAR-T療法は CD19とBCMAを標的としてALL、DLBCL、多発性骨髄腫に承認されている。しかし固形がんに有効なCAR-Tの開発報告は極めて限定的であり、大きく遅れている。
本研究は以下の特色、独創性、優位性を有する。
固形がんへのCAR-T療法の問題点の一つは理想的な細胞表面抗原が限られることである。AMED先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業「難治性がんを標的とした先端的がん特異的抗体創薬基盤技術開発とその応用研究」にて東北大学が開発した独創的なCasMab法により取得されるがん特異的なモノクローナル抗体を用いることにより固形がんへのCAR-T療法開発が可能となる。
AMED先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業R3〜R5「難治性がんを標的とした先端的がん特異的抗体創製基盤技術開発とその医療応用」にてポドプラニン(PDPN)特異的CasMab抗体を使ったCAR-T細胞にてがん特異的反応性の維持に成功した。固形がんは免疫抑制的な腫瘍微小環境の影響を強く受ける。長崎大学と三重大学はT 細胞のGITRシグナルが腫瘍微小環境でのTregによる抑制作用への抵抗性をT細胞に付与し抗腫瘍活性を高めることを見出し、GITR 細胞内シグナルドメインを持つCAR構造を構築し、固形がんへの優れた抗腫瘍効果を示した。本知財は9カ国で特許が成立した。
方法として、CasMab法にて先端的がん特異的抗体を取得し、使用モダリティとがん特異性を担保するメカニズムを解明する。CasMabのscFvを持つzG型CAR-Tを作製し、安全性と抗腫瘍活性をin vitro、in vivoで解析する。in vivo抗腫瘍効果と特異性、安全性は担がんNOGマウスへのCAR-T輸注療法評価系を主軸に評価する。
予備データを持つPDPN特異的CAR-T細胞は骨肉腫、悪性中皮腫、悪性脳腫瘍等の希少がんに有効なCAR-Tとなる可能性が高い。同時に本開発研究内で新たに取得される先端的がん特異的抗体を用いたCAR-T細胞につき順次解析を進める。理想的な細胞表面抗原の欠如と免疫抑制的な腫瘍微小環境の存在の問題を克服し、固形がんに対する画期的なCAR-T細胞療法開発のコンセプトを検証し、有効なCAR-T療法のシーズを複数同定することを目指す。
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<文献>
1. Tanaka T, Suzuki H, Ohishi T, Kaneko MK, Kato Y.
A Cancer-Specific anti-Podoplanin Monoclonal Antibody, PMab-117-mG2a Exerted Antitumor Activities in Human Tumor Xenograft Models
Cells, 13(22), 1833; https://doi.org/10.3390/cells13221833, 2024 (PDF; preprint)