スマートバイオ創薬等研究支援事業

  • AMED

    研究期間:2024年度~2028年度
    代表研究機関:東北大学(研究代表者:加藤幸成
    分担研究機関:大阪大学微生物化学研究所横浜市立大学
    連携研究機関:小野薬品工業株式会社

    課題名
    CasMab法を基盤としたがん特異的抗体の臨床開発

    研究開発内容:
     バイオ医薬品の売上の中で抗体医薬品が占める割合は非常に多い。抗体遺伝子の高度な改変により、小分子化抗体(Fab, scFv, nanobody)や二重特異性抗体など、あらゆるフォーマットが開発されており、その開発の勢いは凄まじい。さらに、抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate; ADC)・T細胞誘導療法(T Cell Engager; TCE)・キメラ型抗原受容体発現T細胞(Chimeric Antigen Receptor-T: CAR-T)療法など、抗体を用いた各種モダリティへの応用が活発化している。一方、がん細胞を狙う場合、どんなに抗体を改変しても、あるいは、どんなに強力な抗がん剤付加や免疫細胞誘導を行ったとしても、がん細胞に特異的な抗体でなければ、常に正常組織への毒性が懸念される。しかし、がん細胞のみに高発現している分子は限られ、理想的な標的分子は枯渇したと言われて久しい。



     そこで、たとえ正常細胞に高発現していても、副作用のない抗体医薬品が作製できれば、難治性がんに対する治療法の開発が一気に進むと考え、先端バイオ(2019~2023年度)と革新バイオ(2014~2018年度)の10年間において、この問題を解決する革新的な技術開発を行った。東北大学が開発したCasMab法(キャスマブ法)は、正常細胞に高発現している膜タンパク質に対してもがん特異的抗体を直接取得することができるため、多くの標的が存在すると言える。すでに、ポドプラニンポドカリキシンのような正常組織で高発現する膜タンパク質に対するCasMabの作製に成功した。また、この10年間のプロジェクトのみで、合計56件の企業導出を達成した。そのうちの1件(HER2に対するCasMab)は、HER2-CAR-T(開発番号:ONO-8250/FT825)として臨床治験に進んだ(参考:最初のONO-Fateの契約)。



     本課題においては、東北大学独自の抗体作製法であるCasMab法CBIS法をフル稼働し、難治性がん(膵がん悪性中皮腫脳腫瘍乳がん肺がん、卵巣がん、大腸がん等)に対して迅速かつ高精度にCasMabを作製することを目的とする。抗体作製のための設備は研究室内に完備しており、また抗体創薬のためのスタッフも充実している。



     アカデミアから企業への技術導出は重要な課題であるが、これが最終目標ではない。シーズを臨床治験に進め、患者のもとへ届け、治療法がなく苦しんでいる患者を救うことが最終目標である。多くのアカデミアと共同でAMED内連携を強化し、また製薬企業との共同開発を通して、CasMabを各種モダリティ(CAR-T, ADC, RIT, PIT)に応用し、難治性がん克服のために邁進する。

    *加藤PJのキックオフ会議にて(令和6年11月1日)
    (左から、加藤、大石、有森、禾)


    *NIHの小林久隆先生との打ち合わせ(令和6年12月5日午前)


    *スマートバイオの全体キックオフ会議(令和6年12月5日午後)


    *スマートバイオの研究内容を抗体学会で紹介(令和6年12月9日)



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    *抗体創薬学分野 研究成果紹介動画
    第10回 抗体創薬学分野 研究成果紹介:HER2-CasMabによる乳がん治療


    第9回:ポドプラニン-CasMabによる肺がん治療


    第8回:CBIS法による高汎用性抗EphA2抗体の開発


    第7回:ACKR4を標的とした高難度抗体開発


    第6回:ポドプラニンを標的とした脳腫瘍の抗体治療


    第5回:ポドカリキシンを標的とした膵がんの抗体治療


    第4回:CD44v10を標的とした口腔がんの抗体治療


    第3回:CD44を標的とした食道がんの抗体治療


    第2回:HER2-CasMabのがん細胞傷害機構


    第1回:HER2-CasMabのがん特異性のメカニズム